2012/04/30

親父との旅  5


土門拳記念館の中には仏像を撮った大きなプリントが並んでいて、しかもわりと間近に見られたように記憶している。
そういった仏教的な像にはなんの興味もなかったのだけど、それでもそのなめらかな陰影をずっとずっと眺めていた。
なにに惹かれたのもわからないまま、それでもなんだか行ったり来たりしてはまた同じ写真を眺め直したり。
ひょっとすると(後に知った)広島関連の写真なんかもあったのだろうがしかし覚えているのは仏像の写真ばかりだ。
そのときのインパクトがいま、モノクロ写真を好んで撮ったりすることにつながってるのもしれない。
とはいえ再び写真に興味を持って日常カメラを持ち出すようになるのはこれから10年以上経ってからの話なのだけど。
土門拳記念館を出た後は最上川の近くで写真を撮った。白鳥がたくさんいて、コートを着たオヤジも記念写真的に撮った。
肉親のそういった写真を撮るのが妙に気恥ずかしかったのを覚えている。でも、何年か経ってそのフィルムを見たとき
撮っておいて良かったと思った。
オヤジは土門拳記念館で写真集を3冊買っていて今でも実家に行くと時々それを眺めたりする。
それを見てるとあの白鳥のいる前で撮ったオヤジと土門拳の写真と列車から眺めていた真っ暗な海が
絡みついたように思い出されてくる。そんなヘンな記憶のつながり方もちょっと面白いのだ。


それにしてもオヤジと白鳥を撮った後、どの駅からどうやって岐阜まで帰ってきたのか、
あれから何度思い出そうとしても不思議と全く思い出せない。ひょっとすると帰りはずっと寝ていたのかもしれない。
土門拳博物館にはもう一度行きたいと思っている。
できれば冬に。そして願わくば奇跡的に晴れてもらってまた青空の下で鳥海山を見てみたい。








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2012/04/29

親父との旅  4

酒田の老先生は琵琶関連のアイテムを集めるのが趣味だった。
EOS5+EF24-85mm F3.5-4.5 USM   RDP2
酒田に居られる時間もそんなにあったわけではないのでタクシーで数カ所だけを観光した。その最中で覚えているタクシーの運転手さんの一言。「こんなに良く晴れる日はこっちの冬の間じゃ滅多にないよ。お客さんたちは日頃の行いが良いんだねえ。」未だにそれが本当なのかどうなのかは知らないけど少なくともその運転手さんの話では東北地方の冬というのはその殆どの日が曇りや雨、雪だという。じっさいたしかに一昨日には悲惨な東北地方の冬を体験したわけなのだけど(列車の中で)それでもその日の気持ちよく晴れた青空とその下遠くに鳥海山が見える雄大な景色はそんな言葉をなかなか信じさせなかった。

そんなふうに寺や景色をみながら最上川のほとりを走って最後に行ったのが「土門拳記念館」だった。言わずとしれた巨匠だけど、その頃の僕は土門拳なんてなにもしらないし、そもそも”人の撮った写真”に特に興味もなかった。一眼レフのカメラは持っていたけれど人の写真を見てなんになるの?くらいの認識の頃。オヤジはさすがにその巨匠の名を知っていたようで、今にして思えば一応は創作で身を立てようとしている僕がなにかヒントになるものをつかめればいいな、くらいの気持ちで連れて行ったのかもしれない。


そして、インパクトは、あった。




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2012/04/28

親父との旅  3



EOS5+EF24-85mm F3.5-4.5 USM   RDP2
酒田駅に着いたのは深夜の1時くらいだったと思う。そんな時間なのに先方の琵琶関係者の老夫婦が駅で待っていてくれた。その方の家に着いて食事をいただき、親父は少し琵琶談義に花を咲かせていたが疲れ切った僕はビールを1杯もらったあと、オヤジよりも先にあっという間に寝てしまった。
 翌日は琵琶の演奏会やその後の懇親会などなど。懇親会は思ったよりも人数が多かったがほとんど知らない人ばかりだった。親父はやはり琵琶の話で盛り上がってるがただの付き人としてそこにいる僕は少々居心地が悪い。お酒を少々頂いて時折薄ら笑いで話を合わせたりしていたけど適当なところで部屋へ戻った。その日のことはこれくらいしか記憶にない。


 そしてその翌日、つまり岐阜へ帰る日。先の老夫婦からせっかくなので少し観光をしましょうと提案されて天気も良かったことなのでタクシーで色々見て回ることになった。とはいえ、さすがにそこは若い人向けの観光ではなく寺社仏閣を見て回ったりするようなものだったけれど。
 その観光でとりわけよく覚えているのは鳥海山は名だたる霊山のひとつで、全国のえらい僧侶たちが即身仏になるためにこの地まで来ていたということ。即身仏というのはつまりミイラのことだ。言い方を変えれば高僧として死ぬためにここへ来ていた、とでもいうか。
ちなみに岐阜の自宅の近くにある横蔵寺というお寺にも一体ミイラが安置されている。なのでミイラ自体に珍しさはなかったのだけれど、しかしその横蔵寺のミイラも実はここで即神仏になって生まれ故郷の岐阜に運ばれてきたのだということを聞いて驚いた。なんだかとかく即神仏の話は興味深くて熱心に聞いた。
現在、全国の即身仏の半分ちかくは山形にあるとのことだ。






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2012/04/27

親父との旅  2


M6+Planar T*2/50 ZM    kodak P3200



ともかく上野駅まで移動して、また1時間ほど待った後ようやく新幹線に乗った。
当時山形新幹線だと思ってたのだけれど、いま地図を見返すとどうやら上越新幹線に乗っていたらしい。
というのも、その新幹線を降りてから在来線に乗り換えて
ずっとひたすら海を見ていた記憶があるからだ。
おそらく新潟がどこかで羽越本線に乗り換えたのだと思う。


正直そこまでの道のりはぼんやりとしか覚えてないのだけれど
その(おそらく新潟あたりで)乗り換えた列車から先は妙に鮮明に記憶しているのだ。


ただひたすら真っ暗な窓の外を見ていたら雪の中で突然列車はゆっくりと止まった。
なにもない田んぼの中だったと思う。
アナウンスで降雪だったか風が激しいためだったかで列車はしばらく停車しますとのこと。
いま考えるとなにもないところで停車するはずがないので
反対側の窓の向こうには駅のホームがあったのかもしれない。


とにかく列車は2時間以上止まっていた。
お腹が空いたのでオヤジの持っていたガムだとかのど飴なんかを舐めていたのを覚えてる。
ビールも確か買ってあったと思ったけどとても飲む気分ではなかった。そしていつしか寝てしまっていた。
起きたのはオヤジの「オイ」と言う声。なんのことはない、単に窓の外に海が見えたぞ、というだけ。
海見えるかな、なんて僕が言っていたからだろう。
窓の外には真っ暗な日本海がずっとずっと続いていた。列車は恐ろしくゆっくりゆっくり走っていたので
真っ暗な海も果てしなく続いた。あんなに長いこと海を眺めていたことはないだろうというくらい
ずっと窓の外を眺めていた。
暗い海で岩陰に座礁している少し大きな船を見た気がするけれど
たぶんあれは夢だ。





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2012/04/26

親父との旅  1


FM3A+Planar T* 1.4/50 ZF.2   Tri-x



もう17、8年ほど前になろうかという昔。


僕はオヤジのお供で岐阜から秋田県の酒田市まで行くことになった。
まだ20代前半だった僕はナニモノでもなく、かといって夢に向かって一直線ともなれず
仕事もバイトをしてるようなしてないようなもやもやとした生活をしていた頃だ。


酒田市へ行く理由は琵琶の演奏会とその関係者との交流を兼ねてだったと思う。
(うちの祖父と親父は薩摩琵琶というのをやっていてその頃僕も多少一緒に習い事としてやっていた)
電車好きで飛行機嫌いの僕を思ってか、酒田までは陸路で行くことになった。
しかし季節は真冬。
ちょうど強烈な寒気団が本州を襲ってJRのダイヤも乱れまくり。
東海道新幹線で東京までは順調に進んだのだけどその先は見通しが立たず。
そんな状況でごった返すみどりの窓口にオヤジは並んで払い戻しだとかここから先の切符と運行状況だとか
そういった色んな交渉をしているようにみえた。
ーようにみえた、というのはすでにそのときみどりの窓口の入り口の側でうずくまること2~3時間。
先の見えない旅はそれだけで既に僕を疲れさせはじめていて、
もっと正確に言うと気力が萎えたとでも言うのか、もう半分どうでもよくなっていた。
このまま帰ろう、と言われれば素直に従っていただろう。


おおきな柱にもたれかかって寝てしまいそうになった頃、ようやく切符を購入しなおした親父が戻ってきた。
それはもちろん岐阜へ帰ろうとなどというものではなく、北へ向かう切符だった。




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2012/04/25

美しい雲


こういうの撮れたとき感激する。
現像したあと思い通りに撮れててさらに感激。




EOS5+EF50mm F1.8    Rokkei PAN25
























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2012/04/24

背中

デート機能を切るのを時々忘れて
全部の写真にこうして日付が入っちゃってるけど
こういうのもそれはそれで良い思い出になりますな。


KLASSE-S    Tri-x





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2012/04/23

幽玄の夕暮れ

上のほうにあるたなびく雲のようなのはなんだろう・・・。
でもまあ時々こういうわけのわからないことがあったりするのも
フィルムのおもしろいところだったりして。


現像ムラっていうオチはやだけどなあ。


M6+Planar T*2/50ZM   RPX400 





























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2012/04/22

暴れる海の上

この日は海も荒れ模様。
なのに無理矢理船を出してもらって
結局ろくに立ち上がれない有様。
SWC+Biogon38mm F4.5    400TMY





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2012/04/21

信号を待つ人、道を聞く人

いつも何枚か撮る神保町の交差点。


M6+Planar T*2/50 ZM   RPX400





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2012/04/20

車窓から

併走する在来線を見ると楽しくて
子供のようにずっと窓にへばりついて見続けてしまうのです。

Rollei35s    PRESTO1600





















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2012/04/19

階段から女学生

高岡にて。

M3+Summicron 50mmF2  PRESTO1600





























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2012/04/18

くらら劇場

毎度毎度ここで数枚撮ってる。
上映内容が変わってるからいいのだ。


M6+Planar T*2/50 ZM   RETRO100







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2012/04/17

駐輪場


雪に車輪のあとがないということは
夜のうちに積もった雪ということで
つまりこれだけの自転車が一晩ココに置いてあったということ?

M3+Summicron 50mmF2    PRESTO1600

















よくよく考えたら前日から降っていたので
みんな乗らずに置いて帰った、ということなのかな。

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2012/04/16

松前町、冬

松前の町。冬の姿がけっこう好きだ。

GF670   Tri-X
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2012/04/15

ドレス


需要があるのかどうか知らないけれど昔からずっと
この店いつもこうやって綺麗なおべべを並べてる。

FM3A+Ai Nikkor 50mm F1.8s    RETRO80S



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2012/04/14

2012/04/13

靴屋さん


神楽坂の途中にあるこの店が結構好きだ。
売ってるものがとかじゃなくて店の佇まいが。


M6+Planar T*2/50 ZM/RETRO100
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2012/04/12


M6+Planar T*2/50 ZM/T-MAX P3200
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2012/04/11

昼食の時間


EOS5+EF28-70mm F2.8L USM
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2012/04/10

廃線の駅舎

いつものように乗っていたときには気づかなかった素敵な窓があった。


さていよいよこの駅もこの駅舎とメインのホームが残るだけになってしまった。


旧名鉄揖斐谷汲線 黒野駅


GR1V RPX400




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2012/04/09

百毒下しA

すごいネーミングな上にじつに良い顔のイラストが。


揖斐郡揖斐川町の商店街で
F3P+Ai Nikkor 35mm F1.4s/125PX



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2012/04/08

青春を過ごさなかった町


高校の3年間通った町なのにほとんど知らない町。
あのころは都会へ行きたくて仕方なくてこんな町になんの興味もなかったから。
高校は町の入り口にあって、それより奥へなんてまったく行く必要がなかったのだ。
車に乗るようになっても町の中を通過することがあるくらいでじっくり見ることもなかった。

今頃になって一回りゆっくり歩いてみた。
とはいえ歳を取ったからと行って特別良いとこだとは相変わらず思わない。
商店街が微妙なシャッター具合の単なる田舎の町だ。
ただ、ゆっくり見渡して色んなところを見る余裕くらいは出来た気がする。

揖斐郡揖斐川町
F3P+Ai Nikkor 35mm F1.4s/125PX


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2012/04/07

じゃらしじゃらされ

仔猫の頃には全く反応しなかった猫じゃらしに
2歳ほどになろうかという最近、夢中になってる。

M6+Planar T*2/50 ZM/RPX400





















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2012/04/06

万葉線

昼下がりの万葉線。
雪がまだ残る季節だったけどこの日は暖かで
日の差し込む車内でゆられてると寝てしまいそうだった。

M3+Summicron 50mmF2/PRESTO1600




















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